ページがないという違い
紙の漫画は見開き2ページが一度に見えるため、視線をどこへ送るかを配置で調整し、ページをめくる瞬間を転換に使います。縦スクロールは上から下へしか流れず、次に何が出るかは見えません。この一方向性が縦スクロール演出の出発点です。だからどんでん返しは、ページをめくる瞬間ではなく、読者がスクロールしてそのコマが画面に入ってくる瞬間に合わせて設計する必要があります。
ページのない縦スクロール漫画には紙と違う規則があります。時間になる余白、1画面に入る範囲、吹き出しの読む順番、ネームでの確認、回の始まりと終わりをまとめました。
紙の漫画は見開き2ページが一度に見えるため、視線をどこへ送るかを配置で調整し、ページをめくる瞬間を転換に使います。縦スクロールは上から下へしか流れず、次に何が出るかは見えません。この一方向性が縦スクロール演出の出発点です。だからどんでん返しは、ページをめくる瞬間ではなく、読者がスクロールしてそのコマが画面に入ってくる瞬間に合わせて設計する必要があります。
コマとコマの間を広く取ると、読む人がスクロールする時間が長くなり、その分だけ物語の中の時間も長く感じられます。緊張を積み上げたり余韻を残したりするときに、意図して余白を長く取るのがこの形式の代表的な手法です。逆にコマを詰めれば速く流れます。余白にごく小さな絵や効果音を一つ置くと、時間が流れているという感覚を加えることもできます。
読者の画面に一度に入る縦の長さが、事実上の演出の単位です。衝撃を与えたい絵は、前の内容と同じ画面に入らないよう間を空けてこそ効きます。ただし画面の大きさは人によって違うため正確な制御は難しく、たいていは余裕のある余白で備えます。
縦スクロールでは、左右に並べた吹き出しの読む順番が曖昧になります。そのため、せりふを上下に並べて順番をはっきりさせることが多いです。1画面にせりふが多すぎると読む速さが急に落ちるので、長い会話は複数のコマに分けて流します。吹き出しのしっぽの向きと大きさを整えるだけでも、誰が先に話しているのかがずっとはっきりします。
多くは携帯電話で読むため、暗い場面は明るい場所でほとんど見えないことがあります。明暗の差を十分に取り、小さな画面で実際に確かめる作業が必要です。背景の濃い暗い表示で読む読者もいるので、白い余白を前提にした演出は意図と違って見えることがあります。完成した原稿は、明るい画面、暗い画面、小さい画面でそれぞれ一度ずつスクロールしてみるのが安全です。
縦スクロールの演出は、線画を描く前のネームの段階でほとんどが決まります。この段階でコマの大きさと間隔、台詞の位置、回の最後の場面を決めておけば、その後の作業で大きく直すことが減ります。ネームをスマートフォンの画面の大きさに縮めて実際にスクロールしてみると、大きな画面では見えなかった問題がすぐに表れます。台詞が集中しすぎた区間、意図より早く過ぎてしまう場面、どんでん返しが前のコマと同じ画面にかかってしまうところを、ここで見つけておく必要があります。
週刊連載では、読者は一週間ぶりに物語へ戻ってきます。そのため回の最初の場面は前の回の流れを自然に思い出させる役割を、最後の場面は次の回を待たせる役割を担います。毎回大きなどんでん返しを入れる必要はありませんが、人物の決断や新しい情報のように、読者が続きを気にしそうなところで切るのが基本です。逆に毎回大げさな引きが繰り返されると読者が疲れるので、緩急をつけることも演出の一部です。
演出の感覚は、好きな作品を分析することで早く身につきます。印象に残った場面を見直しながら、コマとコマの間隔がどれくらいか、台詞がいくつの吹き出しに分けられているか、効果音と背景がどう使われているかを書き留めてみてください。同じ場面を自分でまねして描いてみると、なぜそう配置したのかが手で分かります。ただし勉強のためにまねした絵を自分の作品のように公開すると著作権の問題になりかねないので、練習用にとどめておく必要があります。